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2025年2月23日

🌱おうちにトラがやってきた!『おちゃのじかんにきたとら』

 


あらすじ

ソフィーとお母さんがお茶の時間にしようとしていると、玄関のベルが鳴りました。

やって来たのは、なんと、とら!

「ごめんください。ぼくとてもおなかがすいているんです。おちゃのじかんにごいっしょさせていただけませんか。」と、礼儀正しく。

ソフィーとお母さんはとらを迎え入れ、お茶の時間がはじまりました。

大きなとらは、それはもう食べるは食べる!


おすすめポイント

ありふれた日常の中におとずれた非日常を、あたたかく迎え入れる物語。

コロナ禍以降、自宅に来客を迎え入れてお茶することもむずかしくなった時期もあったけど。

うちにもとらが来るといいな!


本の情報

『おちゃのじかんにきたとら』

ジュディス・カー/作・絵 晴海耕平/訳

1994年 童話館 32p 26cm イギリスの絵本

自分で読むなら小学校低学年頃から 読んでもらうなら3歳頃から




2024年11月24日

🌱ウクライナ民話『てぶくろ』冬の定番名作絵本

ウクライナへの平和を願う思いから、2022年に話題となった作品。ウクライナ民話をもとに作られた絵本であることに加え、様々な種類の動物が1つの手袋の中で場所を譲り合いながら暮らそうというストーリーが、共生や平和への願いにつながっている。

古くから語り継がれた民話のもとに描かれ、日本では1965年に出版されて以来、長く読み継がれる、冬の定番名作絵本。


あらすじ

森を歩いていたおじいさんが、手袋を片方落として、行ってしまいました。すると、ねずみがやってきて、「ここでくらすことにわ」と、手袋にもぐりこみました。そこへかえるがやってきて、「わたしもいれて」。次にうさぎがやってきて、「ぼくもいれてよ」。

動物たちが次から次へ...。「わたしも」「ぼくも」とやってきます。 こんな大きな動物まで?もう無理!でも動物たちは、「それじゃどうぞ」。

手袋の中はもうぎゅうぎゅう!おしくらまんじゅう!

おじいさんは、手袋が片方ないのに気がついて、もどってきました。さぁ、びっくりした動物たちは、いったいどうしたのでしょう?


おすすめポイント

ごく普通の片方の手袋の落としもの。その手袋を舞台に「いれて」「どうぞ」が繰り返されるうち、次々にやってくる大きな動物たち。

次はどんな動物が来るんだろう?入れるのかな?どんどんふくらむ手袋とともに、ワクワクとドキドキもふくらみます。

子どもたちは繰り返しのお話が大好き。何度読んでも「もう1回!」と言われること間違いないの絵本です。

背景は暗い雪の森。冷たい雪の舞う背景が、手袋の中にいる動物たちの温かさや思いやりを、よりいっそう感じさせてくれます。

動物たちの名前や着ている民族衣装も、それぞれの個性を表現し、物語を盛り立てます。

ちょっぴり不思議で、心温まる物語。 寒い季節に、ぜひご一読ください!


本の情報

ウクライナ民話『てぶくろ』

エウゲーニー・M・ラチョフ/え うちだりさこ/やく 1965年 福音館書店 16p 28cm ウクライナの絵本 自分で読むなら小学校低学年頃から 読んでもらうなら2、3歳頃から




2024年11月4日

🌱『急行「北極号」』大人に贈りたいクリスマスの絵本

大人になって出会った絵本の中で、これほど即買いだった絵本は他にない。


汽車の絵本?いえ、クリスマスの絵本です!

表紙には、雪の夜にたたずむ重厚感のある汽車の絵が、落ち着いた色調で描かれている。タイトルは『急行「北極号」』。この表紙とタイトルを一見すると、クリスマスの絵本とは思えないかもしれない。それが実は、大人にこそオススメしたい、不思議で神秘的な魅力のあるクリスマス絵本なのだ。


あらすじ

クリスマス・イブの夜、僕は息をひそめてサンタのそりの鈴の音が聞こえてくるのを待っていた。ところが、聞こえてきたのは鈴の音ではなく、汽車の音だった。窓の外を見ると、なんと家の前に汽車が止まっている。僕は忍び足で家の外へ出て、汽車に駆け寄った。車掌に聞くと、北極点へ行くのだという。

汽車に乗り込むと、客車の中は楽しそうに過ごすパジャマ姿の子どもたちでいっぱだった。汽車は暗い森を抜け、山や谷を越え、いつのまにか北極点へ。

サンタや、サンタのお手伝いをするたくさんの小人たちが暮らす北極点は、とても大きな町で、クリスマスのおもちゃが全部作られているという工場がいっぱいある。

クリスマス・イブのその夜は、北極号でやってきた子どもたちの中から、サンタのプレゼント第1号をもらう子どもが選ばれるという。サンタは僕を指さして「この子に決めるとしよう」と言うと、僕をそりに乗せてくれた。でも、僕がいちばんほしいものは、サンタの大きな袋の中には入っていない。

物語のクライマックスはここから。ぜひ手にとって読んでみてほしい。


美しい絵画のような絵本

この絵本の作者は、「光の魔術師」といわれるオールズバーグ。

夜の暗闇をそっと照らし出す汽車のライト。降り積もる雪の明るさ。狼がうろつく森の静けさ。汽車の中で過ごす子どもたちの楽しそうな様子。町のあたたかみ。サンタのおだやかでやさしい顔。主人公「僕」の気持ち。物語の最終ページで神秘的な存在感を放つ鈴。

物語の要がすべて、「光」の具合で見事に表現されている。

全ページ見開きいっぱいに描かれた絵は、どれも美しく、キラキラとした賑やかな明るさはないが、落ち着いたあたたあいクリスマスを感じることができる。


大人にオススメの絵本

文章量は多めで、漢字が多く、ルビはない。村上春樹による日本語訳の文章は、大人を意識して書かれているように思う。

作者がこの絵本に込めたであろう思いや、読者に伝えたいであろうメッセージも、「かつて子どもだった大人たち」に向けたものではないだろうか。子どもの頃の自分、そして子どもの頃の気持ち。きっと読む人それぞれに、大切な何かをよみがえらせてくれる絵本であると思う。

クリスマスは、大人だって楽しみなもの。かつて子どもだった人たちに、ぜひ届けたいクリスマスの絵本。


本の情報

『急行「北極号」』

クリス・ヴァン・オールズバーグ/著 村上春樹/訳 2003年 あすなろ書房 32p 23cm 大人向け アメリカの絵本 コルでコット賞受賞作品 1987年に河出書房新社から出版されたものの改訳版

コルでコット賞:アメリカで出版された絵本の中でもっともすぐれた作品の画家に対して1年に1度贈られる賞。1937年にアメリカの図書館協会によって創設。19世紀イギリスの絵本画家ランドルフ・J・コルでコットの名にちなんでいる。




2024年9月15日

🌱ハードカバーで読みたい『はてしない物語』


ミヒャエル・エンデ作『はてしない物語』は、魅力的な装丁のハードカバー版と、岩波少年文庫から出ている文庫版、2種類が出版されている。安価で手軽な文庫版があるにもかかわらず、高価でずっしりしたハードカバー版をおすすめするのには理由がある。


本を手にしたときの特別な存在感

あかがね色の光沢、絹のような手ざわりの布張り、2匹の蛇が楕円を描く模様、ずっしりとした厚みのある存在感。子どもの頃、この本を初めて手に取ったときの特別な存在感は、大人になった今も変わることがない。本を手にしたら、読み始める前から物語に引き込まれそう…、そんな不思議な存在感を発している。この特別な存在感が味わえるのは、魅力的な装丁のハードカバーならでは。 読者として司書としてたくさんの児童書を手にしてきたが、装丁も含めて、人生でもっとも心に残っている本の1つだ。


装丁も物語の一部

ハードカバー版最大のポイントは、《物語の中に登場する本と全く同じ装丁である》ということ。

主人公である10歳の男の子バスチアンが読んでいる本は、『はてしない物語』。 そう、今読者である自分が手にしている本を、主人公のバスチアンが読んでいるのだ。バスチアンのいる世界と 、バスチアンが読んでいる本の主人公アトレーユの世界。 2つの世界が2色刷りの文字で分けられ、並行して描かれている。タイトルのとおり、本の厚みのとおり、はてしなく壮大な冒険の物語が繰り広げられる。

バスチアンはバスチアンが読んでいる『はてしない物語』へと入り込み、読者も読者が読んでいる『はてしない物語』へと入り込む 。この作品の特徴は、読者である自分が本の中へ入っていく感覚。

主人公のバスチアンが読んでいる『はてしない物語』は、まさにハードカバー版の『はてしない物語』と同じ装丁。この物語の醍醐味である「読者が物語の中に入って冒険する感覚」は、ハードカバー版だからこそ成り立っているもの。装丁も含めて1つの作品に仕上がっている。


読書への自信につながる

本の分厚さからすると一見「児童書には見えない」という声も聞くが、児童書に分類される。 対象年齢は小学校高学年頃から。 私は小学校低学年の頃に母に読んでもらって、夢中で楽しむことができた。漢字にはルビがふってあるので、小学生でも自分で読んで楽しむことができる。

文章量のある本を読めるようになってきた子どもたちに、ぜひ読んでほしい。「こんなに分厚い本を自分で読めた!」という自信を持つことができ、次への読書へとつなげることができる。

大人にとってもしっかり読みごたえがあり、児童書とはいえ本好きな大人をも満足させてくれる1冊。作品世界に引き込まれて夢中になれるに違いない。


まとめ

ハードカバー版最大のポイントは《物語の中に登場する本と同じ装丁》であること。残念ながら文庫版では、その装丁はない。

この物語の醍醐味である「読者が物語の中へ入って冒険する」感覚は、ハードカバー版だからこそ立つもの。装丁も含めて1つの物語として成り立っているため、ハードカバー版で読んでこそ作品世界を味わうことができる。

これから読んでみようと思われる方には、ぜひ文庫版ではなくハードカバー版で読むことをおすすめしたい。ちょっと躊躇してしまう価格かもしれないが、一生モノの本となるに違いない。

魅力的で特別な装丁は、プレゼントにも喜ばれる。

大人も子どもも夢中になれる、冒険ファンタジーの名作中の名作。


本の情報

『はてしない物語』

ミヒャエル・エンデ/作 上田真而子/訳 佐藤真理子/訳 1982年 岩波書店 590p 23cm ドイツの冒険ファンタジー 対象年齢:小学校高学年頃から大人まで 箱入り(箱から出した本体が特別な装丁となっている)